〜第二章〜

オランダ、アムステルダム。もともとアムステル川をせき止めてダムを作り、その上に街があることからその名が付いた。オランダは相対的に見て、世界で最も美術館や博物館が多い国で、アムステルダムには42ヵ所ある

美術品の好きなzyazuuにとってはそれだけでもオランダに来たかいがある。もちろん、オランダに来た理由はそれだけはない。

「zyazuu」

不意に名前を呼ばれzyazuuは振り向いた。もちろんそこには愛する人が立っている。

「今日はアンネ・フランクの家見に行こうぜ」

「おうっ」

歩き出したらりぃの後をzyazuuが追いかける。そう、オランダに来た理由は、同性同士の結婚。らりぃとの生活。
これ以上の何を望むのか。何もあるまい。誰にも邪魔されず、二人きりで暮らせるのだから・・・



「わたしだ。何事だね?会長を待たせるわけにはいかないので手短に頼むよ」

タニは少し早口にまくし立てた。会長のサキはいつも冷静沈着だったが、彼を怒らせると、恐い。昔、サキを起こらせた社員が・・・・・、いや、やめておこう。

「・・・・・・というわけです」

その声にタニはハッとする。聞いていなかった。悪いがもう一度繰り返してもらった。

「・・・・・・なに?・・・分かった。後はこちらで対処する」

まずいな・・・。タニは受話器を置くとサッと踵をかえし会長室へと戻った。よりによって何故・・・・・・。

「どうしました?」

会長室へ戻るとサキが早速質問する。

「実は・・・、オランダで進めていたプロジェクトに問題が出たようです。しかもかなり大きな・・・」

「それで、どうやって解決する?かなり大きな問題なんだろ?向こうにいる人間だけでどうにか出来るのかい?」

「それは・・・・・・」

タニはサキの質問に答えることが出来なかった。するとサキが口を開く。

「じゃあ、君が行ってきて解決してくれ。社長自ら行くのなら解決できるだろう?」

「・・・・・・え?」

タニは思わず聞き返す。

「だから君がオランダへ行ってきてくれ。何か問題があるかい?」

「いえ・・・・・・、分かりました。行かせて頂きます」

「では早速、準備をして早急に発ってくれ」

「はい」

タニは違和感を感じずにはいられなかったが、会長命令ではどうしようもない。オランダか・・・。zyazuuとらりぃがいる国だ。いや、正確には「いるであろう国」かな。そんなことを考えながらタニは会長室を後にした。

と、その時。後ろを向いたタニの耳元に吐息がかかる。

「それはそうと、少し遊んでいかないか?」

タニは驚いて一瞬固まる。何時の間に後ろに立ったのか分からなかった。

「い、いえ・・・急ぎますので・・・・・・」

「ああ、そうだったね。残念」

タニは思った。何でこの会社には「ホンモノ」なヤツが多いのだろう?無論自分も例外ではないが・・・。


タニが出て行くとサキは自分のデスクから受話器を持ち上げ、ボタンを押した。数回、呼び出し音が鳴り電話が繋がる。

「ああ、私だ。例のヤツ・・・そう、頼むよ。楽しみにしてるよ」

そういうとサキは受話器を置いた。窓から遠くを眺めながらサキが呟く。

「さあ、私を楽しませてくれよ・・・。」

夜の窓ガラスにサキの微笑をたたえた顔が写っていた。



残業を終えたbokoと砂くじらは、砂くじらの部屋で一緒にワインを飲んでいた。遅くまで残業したbokoへの、砂くじらからの残業手当といったところか。

bokoはワイン好きが功を奏し、ワイン絡みのそれなりに責任ある仕事を任されていた。もちろん、その影で砂くじらが糸を引いたのだが・・・。

「どうだ?残業手当の味は?」

「はい・・・美味しいです・・・」

元気なさげにbokoが返事を返す。

「どうした?元気がないな。よし、慰めてやろう」

そういうと砂くじらはbokoを抱き寄せた。そして口付けをする。

「んっ・・・・・・ふう・・・」

二人の口から息が漏れる。そして砂くじらは手をbokoの下半身へと這わせる。その手が標的に触れようとしたその時。

♪おいしいキノコはホクトおいしいキノコはホクト♪

きのこの唄の着信メロディが鳴り響く。それは砂くじらの携帯だった。

チッ、と舌打ちをし、動かしていた手を止めて渋々電話に出る。

「はいもしもし?」

砂くじらはやる気のない声で応答する。しかし次の瞬間には態度がガラっと変わっていた。

「はい。はい。え?・・・あ、はい。分かりました。失礼します」

砂くじらが携帯をもってその場でお辞儀をする。その姿は少し滑稽に見えてbokoは微笑む。

「どうしました?」

bokoが聞く。

「さあ?俺にもさっぱりだよ。いきなりワインの仕事で出張しろと言われた。しかもbokoと一緒に」

「僕と?」

不思議そうにbokoが聞き返す。ワインの仕事で出張するのは分かるが、なぜ自分がわざわざ部長だけでなく自分まで指名されたのだろう。そこまで考えてbokoは砂くじらに聞いた。

「で、どこに出張なんですか?」

砂くじらはゆっくりと答えた。


「オランダだよ」




今、波乱の歯車が一人の男によって回し始められた。




序章私庵)〜第二章(ここ)〜第三章ひきこもごも


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