「『私庵』1000HIT企画」801小説リレー
〜最終章〜
『もう貴方しか愛せない・・・』序章(私庵)→第2章(サンセベリア)→第3章(NO PRIDE)→第4章(ここ)→最終章(ここ)
zyazuuはいつの間にか川の土手を歩いていた。いつの間にか雪も止んでいる。どこをどう走って来たのかは覚えていない。なにも考えられなかった。そんな、らりぃが・・・・・・。
そこまで考えてzyazuuは気がついた。いま歩いている土手は高校時代、野球部の練習でらりぃと共に汗を流したランニングコースだったのだ。
「懐かしいな」
zyazuuは小さくそう呟くと腰を下ろし、夕日を眺めた。
「zyazuu!」
「?」
どこからか自分を呼ぶ声が聞こえた気がしてzyazuuは回りを見回す。気のせいか。そう思った次の瞬間。
「zyazuu!」
今度ははっきりと聞こえた。もう一度回りを見回す。遠くに人影が見える。それはだんだんと近づいてきた。近づくにつれてそれが誰であるのか分かってきた。いや、最初から分かっていた。
「らりぃ・・・・・・」
それはらりぃだった。らりぃは二人に落とされそうになったが一瞬の隙をつき、逃げ出して来たのだった。
「もしかしたらここへ行ったんじゃないかと思って来て見たけど、当たりだったみたいだな」
らりぃが息を切らせながら言う。さらにらりぃは続けようとする。
「実は・・・」
その言葉をzyazuuがさえぎる。
「いや、もう分かった。ここまで来ただけでらりぃの言いたい事は分かる。俺とお前の仲じゃないか」
そこまで聞くとらりぃはzyazuuに抱きつき、土手の草むらへと押し倒した。
「強引だな。」
zyazuuは少し意地悪そうに言った。
「好きなくせに」
らりぃも少し意地悪そうに言った。そういうとらりぃは激しくzyazuuにキスをした。
激しく舌を絡ませる。走ってきたばかりのらりぃのそれは熱かった。その温度差がまた、より一層の興奮を生む。舌の絡み合う音と、草が風でこすれる音が二人の耳に届く。
二人は一心不乱に抱き合った。時に激しく、時にやさしく、狂ったようにお互いに触れる。
そして、果てた。
「なあzyazuu」
不意にらりぃが話しかける。
「ん?」
zyazuuが軽く相槌を打つ。
「愛してる」
「な、なんだよ、いきなり。 って、いきなりは何時もだな」
そんなやり取りをすなくじらとbokoは見ていた。逃げたらりぃを追いかけてきたが、追いついた時にはもう遅かった。
「どうやら私の負けのようだな。」
すなくじらは寂しそうに言う。
「部長」
bokoがそっとすなくじらの手を握る。
「俺じゃ、駄目ですか?」
「boko・・・・・・」
二人の姿もまた、草むらへと消えた。
らりぃは時々、全く予期出来ないことをする。
「それが俺の長所でもあり、短所だ」
らりぃはつづけた。
「なあzyazuu、オランダへ行かないか?」
「は?いきなり過ぎないか?それ。」
zyazuuには全く意図が分からない。
「あのな、実は、オランダでは同性の結婚が認められているんだ」
「え?それって・・・・・・」
「結婚しよう」
「らりぃ・・・・・・・・・」
二人はじっと見つめ合っていた。二人の心が一つになった、そんな感触があった。
そして二人はまったく同時に同じ言葉を言った。
「もう、貴方しか、愛せない」
完
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